前回のブログ記事において、経済新聞や報道などで報道されています「東芝問題」について、その巨額損失の原因になった「のれん」について書きました。
今回はその続きです。
ここで、東芝の「のれん」に関する報道記事をちょっと抜粋してみまね。
東芝、原子力事業でのれん減損7000億円 苦渋の発表
(日経新聞電子版2017年2月14日)
「東芝は14日、米原子力事業ののれん代として7125億円の減損処理を行うと発表した。大幅な減損を計上することで2017年3月期通期の連結業績は、最終損益が3900億円の赤字となる見通し。」
上記記事でわかることは、東芝の巨額損失の原因に「のれんの減損」があることが分かります。
そして、このニュースを理解するために
①のれんは会計上どのように処理されるのか
②のれんの減損とはいったい何なのか
ということについて記事を書いてます。
前回は①について書いたので、今回は「②のれんの減損とはいったい何なのか」について書こうかと思います。
減損会計について
のれんの減損処理について理解するためには、「減損会計」について理解する必要があります。
減損会計について規定している会計基準に
「固定資産の減損に係る会計基準」が存在します。
この減損会計とは何なのか?
「固定資産の減損とは、固定資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理」
とされています。
でも、専門的な表現ですので、ちょっと読んだだけでは何のことやら・・・。
この減損会計について、ちょっとイメージの図を使ってみてみましょう。
上記図は、建物に100万投資し、その建物の利用により5年間にわたり、毎年30万の収益を上げているという図です。
100万の投資額=取得原価の建物を5年にわたり利用するのですから、発生主義会計では、減価償却という手続きを経て、5年にわたり費用計上されていきます。
このため、毎年の利益(期間損益計算)は
「収益30−費用20=利益10」
となり、投資における経済計算では、
「収益150−投資額100=投資利益50」
と計算されます。
経営者が建物に100万投資するということは、当然ですが投資額100万を回収でき、さらに余剰としての利益を得られるという判断のもとに行われますね。
しかし、そのような当初の予想に反し、思うように収益を上げることができなかったらどうなるでしょうか・・・?
上記図は、当初毎年30万の収益を上げることができるとの予想に反し、2年目から20万円しか上げれず、最後の年は0万円であったことを示しています。
このため、2〜4年の利益(期間損益計算)は
「収益20−費用20=利益0」
となり、投資における経済計算では、
「収益90−投資額100=投資利益△10」
と計算されます。
つまり、投資額100万の一部が回収できないという状況になっています。
従来の日本の会計では、減損会計なんてありませんでしたので、この収益性低下による損失は、建物売却まで表面化しませんでしたが、減損会計の導入により、減損の兆候が確認され、収益性の低下が確実と確認された時点で、損失を計上し、過大な帳簿価額を減らす処理が行われることになったのです。
ちなみに、上記の図をみれば分かるかと思いますが、減価償却は投資額(取得原価)を利用(耐用)年数にわたり期間配分する手続きですので、投資額は回収されることが前提となっています。
なお、この減損会計の導入は、わが国の経済界において非常に大きなインパクトがありますので、先送りされてきた経緯が実はあるのです。
そして、東芝では海外子会社の「のれん」において、当初の予想よりも収益を上げられず、減損処理により多額の減損損失が出たというわけです。
ここまで読むと「ふ〜ん。なるほどな。」という感じでしょうか?
実は、ここに座学学習の問題点があります。つまり、「わかったつもりになる」。
でもですよ、もし自分自身が経営者として、「子会社の買収額を決定」し、「子会社の買収の会計処理」を考え、「のれんを算定」し、そのうえで「うわ〜失敗した・・・。思ったより収益が上がらなかった。のれんについては減損処理しないといけない、ということを体感できたらどうでしょう?
そう、上述の東芝の多額の損失処理についてもかなりイメージできますね。
そして、わたくしどものビジネスゲームM-Cass上級編はまさしくこのことを学べます。
上級編では、他のチームの会社を買収できるように設計されています。
その際は、買収者の決定を競争入札とし、それぞれのチームが買収額を自分たちで決定(純資産簿価法を採用)します。その買収額をいくらにするかで、この「のれん」の金額が決まります。
まさしく、その金額を自分が決めるわけですから、買収先の収益力をいくらに見積もるのか、そういうことを自分の判断で行うわけです。
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