ちょっと今日は「ドラッカー」についての記事を書きたいと思います。
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
というベストセラーもありましたから、ご存知の方も多いでしょう。
ドラッカーといえば、「経営学の父」と呼ばれているほど人物で経営学に関する名著を多数残しています。
日本においても、ユニクロを展開している柳井社長が、「ドラッカーの言葉がいかに正しかったか。それを、日々実感している」とおっしゃっています。
彼は「利益と儲けは異なる」ということについても言及し、度々、会計学の内容についても述べています。
ということで、今回、ドラッカーが残した「会計」にまつわる言葉を彼の著書からご紹介したいと思います。
『例えば、事業の目標として利益を強調することは、事業の存続を危うくするところまでマネジメントを誤らせる。今日の利益のために明日を犠牲にする。「現代の経営〜上」P82 』
おお〜のっけからですが、
ドラッカーは「利益を強調することは、マネジメントを誤らせる」と言っています。
会計を学ぶ者にとっては「なんですと!?」という感じです。
『会計システムのどの部分が信用でき、どの部分が信用できないかはあきらかである。われわれがとうてい歩くべきではない薄氷の上にいることは明らかである。最近、キャッシュフローが重視されるようになったのも、会計学の二年生でさえ損益計算書は化粧できるからである。「ネスクスト・ソサエティー」P115』
利益について、強調するとマネジメントを誤らせるのは、「損益計算書は化粧できる」からということのようです。
さらに、彼は次のように言っています。
『利益が問題なのではない。バフェットは銀行のローン・アナリストに聞くという。キャッシュフローを問題にするからである。「ネクスト・ソサエティー」P156』
ドラッカーは、経営上においては利益よりも、キャッシュフローを問題としているようです。
ここにこそ、今回のタイトルである「利益と儲けは違う」ということに繋がります。
企業会計では、利益の計算方法下記のようにを学びます。
利益=収益ー費用
ですが、その意味や経営上の有用性といったことは一切学ばず、上記の計算式を覚えるだけでは、ビジネスにおいて活かすことはできません。
会計はあくまでも「道具」に過ぎません。
なので、テキストやセミナーに参加して「分かったつもり」になるより、体感として理解し、「道具」として使いこなせる知識を身につけていただければと思います。
そうでないと、AIが発展し、職業構造が大きく変わるこれからの時代についていけませんしね〜。
では、経営者の感覚でいう「儲け」と、企業会計上の「利益」とはどう異なるのか?
儲けとは稼いだ現金、つまりキャッシュフローのことであり、日常生活で使う「儲け」という言葉のニュアンスは、会計の「利益」とは明らかに違っているのです。
経営者のまっとうな感覚からすれば、「儲かる」とは、商売が順調で預金口座にお金がどんどん貯まり、気持ちに余裕のある状態のことで、会計上の「利益が出る」とは、計算において、売上から費用を差し引いた金額がプラスのことなのです。
そうすると、大元をたどると
利益=収益ー費用
儲け=収入ー支出
の違いということになります。
ちなみに、両者の違いをよく、簿記検定1級受験生や公認会計士受験生にも質問するのですが、明確に答えられる人というのは以外と少ないです。
では、結論として、「利益」の何が問題だとドラッカーは言っていいるのか?
上記において、利益=収益ー費用と書きましたが、「収益」や「費用」というのは「発生主義会計」固有の概念なのです。
発生主義会計とは、収入・支出の事実にかかわらず、純資産(元手)の増加や減少の原因となる事実によって利益計算を行う会計のことをいいます。
具体的には、「ツケ」で商品の売り買いをする取引が分かりやすいですね。
例えば、お客さんに商品を100万円で販売し、代金は1ヶ月後に
受け取るという約束であった場合、
商品は渡しているものの、代金100万円はまだもらっていません。
しかし、発生主義会計では、この段階で「売上」という「収益」を計上します。
お金はもらっていないので「収入」はありません。
ここが「収入」(この会計を現金主義会計といいます)と「収益」の違いとなるわけです。
さらに、ここに「会計期間」という概念がでてきます。
会計期間とは、要は会社の活動を1年間等で区切り、決算・会計報告をするための人為的に区切った期間のことです。
この点について、ドラッカーは次のように述べています。
『ある経理畑出身の社長がいみじくもいっていたように、「事業年度という暴君」から自らを解放しないかぎり、合理的な事業のマネジメントは行えない。「現代の経営〜上」P106』
つまり、自動車会社や製薬会社のように、5年、10年のサイクルで回るビジネスもあるにもかかわらず、会計はこのビジネスサイクルを無視して、1年間(上場企業は四半期)で期間を区切って業績を計算することを要求している。このことが、拙速な経営をうながし、会社経営の足を引っ張っているというのです。
そして、会計期間で区切って行われる利益計算(期間損益計算)は、次年度の収益を当期にもってきたり、当期の収益(費用も)のを次年度にもっていったり、といった操作が可能です。
だからこそ、ドラッカーは、会社経営において「キャッシュフロー」の重要性について言及しているわけです。
期間利益は簡単に操作でき、この点に問題がある。
しかし、キャッシュフローは操作できない。元データは預金通帳だからだ!というわけです。
ということで、ここまで書いた内容をまとめると次のようになります。
第1:利益と儲けとは違う
第2:期間利益は過去の計算結果にすぎず、しかも、いかようにも操作できる。
第3:ビジネスは会計期間とは関係なく継続して行われる。よって、期間利益では会社の本当の業績は分からない。
第4:利益の多寡に関係なく、現金を生み出せなくなると会社は破綻する。
ということになります。
いや〜会計の計算をただ勉強しているだけでは分からないもんですね。
なお、上記のことを「体感的に」そして「楽しんで」学んでいただけるものが
わたくしどものビジネスゲームM-Cassです。
初級編の現金主義会計から、中級編の発生主義会計、そして上級編のキャッシュ・フロー計算と進んでいくことで、「ドラッカーが言ってたのはこのことだったのか・・・」と理解できる仕組みになっています。
ぜひ、一度、当セミナーにご参加ください。
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