高校の商業科の入学者の減少や大学商学部の不人気が昨今、さらに言われはじめております。
しかし、商業教育の重要性はこれからさらに増していくと、ビジネスの現場にいて感じています。
日本の企業は技術や研究力はあっても、それをビジネスに乗せられないという課題があります。
これは、ビジネス系の参謀や片腕となる人材が不足しているためです。
例えば、天才本田宗一郎を支えた大番頭の藤沢氏、松下幸之助の女房役である、髙橋荒太郎氏などです。
その理由として、現状の商業高校は、どうしても検定試験対策に偏りすぎているのが原因だと私は考えてます。
日商簿記1級に合格すると新聞に載ったり、良い大学に推薦で進学できたりするため、試験対策に重きが置かれがちです。しかし、試験問題を解けることと、実際に経営で活用することは全く別物です。
検定試験では、数字から会社の状況を読み取り、経営判断や経営施策を打ち出すような問題は出題されません。
しかし、ビジネスの現場で求められる商業分野の人材には、出た数字に対して社長にどのような提案ができるか、部下を説得して同じ方向性へ導けるかといった能力が求められます。
私は既存の商業高校や専門学校において、現在の授業にこれらの要素をプラスアルファするだけで、全国に類を見ない商業教育が提供できると感じています。
新しい教育として、私たちが取り組んでいるビジネスゲームについてご紹介します。
これは先生方の授業を全く新しいやり方に変えるものではありません。
ビジネスゲームは、ゲームを使って簿記や会社経営を楽しく学べるものです。
座学だけでは学習効果が低く、現場で使えないという問題があります。
例えば、簿記を学んでも経営はできません。これを解消するため、アメリカの警察官がVRを使ったシミュレーターで学ぶように、「やりながら学ぶ」ことがこれからの主流になると考えています。もちろん座学がなくなるわけではなく、座学で学んだことをシミュレーターや実地で試し、再び座学に戻るという繰り返しが効果的です。
私自身、小学生の頃からRPGゲームが好きで、ゲームをしながら自分自身もリアルに成長できたら良いのにと思っていました。
それを実現するのが、私が開発したビジネスゲームです。
ゲームをしながら友達と競い合い、リアルに成長できるものです。実際に熊本商業高校の簿記部や、福岡の会計専門大学院でも入れていただきました。
簿記部での実践では、日頃引っ込み思案な生徒がゲームの中でリーダーシップを発揮するなど、意外な能力や一面が見られることもありました。東園中学校や小学校でもビジネスゲームを導入しており、中学校では家計簿を通じて商売の仕組みを、小学校では果物屋さん経営ゲームを通じてお金の計算を学んでいます。
なお、千原台高校の商業科でも生徒たちがビジネスゲームに取り組んでいます。
熊本市立総合ビジネス専門学校では、正規のカリキュラムとしてビジネスゲームが導入されており、簿記だけでなく、経営分析、管理会計、経営戦略なども学べます。熊本学園大学の商学部でも正規カリキュラムとして導入され、150名の学生が履修しています。
ビジネスゲームの活用方法としては、座学で簿記を学び、その後ゲームで実践する、あるいは先生と生徒がゲームで対戦することで、生徒の学習意欲を高めることができます。
もし生徒が負ければ「簿記をもっと勉強しなければ」と思い、勝てば「もっと勉強しよう」という自信につながります。
熊本県内の商業科の先生方も、簿記研究部会でこのゲームを体験されており、導入を検討する動きもあります。本校で導入する場合も、授業と組み合わせて知識の確認や深掘りに活用するのが良いでしょう。
ゲームを通じて疑問点が生じれば、再度授業や教科書に戻って学習を深めることができます。
ビジネスゲームは決して難しくなく、ミニゲーム(1時間程度)と正規版ゲームの2種類があります。
ミニゲームは家電量販店経営で、3種類のパソコンを仕入れて売るというシンプルな内容です。
初心者から上級者まで、レベルに合わせて学べるようになっています。
また、計算シートとしては、簿記の原理を理解するために、3色の付箋を使って借方と貸方を貼っていく「ミニ版の会計帳簿」から始めます。
これにより、簿記の原理が簡単であり、世界共通であることを理解させ、その後、本格的な仕訳帳や総勘定元帳へと進みます。さらに進んだレベルでは、仕訳は印刷済みの計算シートを使い、金額入力と経営戦略に焦点を当てます。
熊本市立総合ビジネス専門学校では、簿記の授業で3級、2級、1級のクラスがあり、定期的に合同で財務分析を行ったり、ゲームを実施しています。
その際、1級や2級の生徒が3級の生徒に簿記を教える機会も設けています。
このような取り組みを授業の合間に定期的に取り入れることで、生徒の変化や気づきが生まれ、授業への理解も深まります。
私たちが担当するようになってから、ビジネス専門学校での日商簿記2級合格者が年間1、2人から昨年度は7人に増加しました。
ゲームを通じて検定対策もできるため、生徒から検定対策に関する不満は全くありません。
ゲームを簿記学習に活用する利点は3つあります。
その1簿記一巡と帳簿組織を理解できる:
従来の簿記学習は断片的になりがちですが、ゲームでは簿記の一連の流れと帳簿組織全体を一人で体験できるため、「先生が言っていた決算はここなのか」と全体像を理解できます。これにより、検定対策の仕訳問題などが、全体の中のどの部分の学習なのかを生徒が把握できるようになります。
その2気づきと疑問点が生まれる:
「流暢性の幻想」という心理現象(分かったつもりになること)を防ぎます。ゲームをやってみることで、自分の理解不足に気づき、それが疑問点となり、教科書に戻って確認することで、より効果的な学習につながります。定期的に先生と対戦するなど、生徒のモチベーション向上にもつながります。
その3試験対策だけでなく、ビジネス現場で活かせる力を養成:
簿記検定試験は決算書を作成できるかを問うものですが、ビジネス現場では決算書を「読み、活かす」能力が求められます。ゲームを通じてこの「読み、活かす」能力を養いながら、検定合格も目指せるのが強みです。
以上、このビジネスゲームは、教育機関誌にも取り上げられ、会計教育学会でも論文発表されており、教育ツールとして確立されています。
また、ビジネスゲームの活用は簿記の学習にとどまりません。ゲームの途中にワークを挟み、例えば「ノートパソコンを売って100万円の利益を出すには何台売る必要があるか計算してみよう」といった課題を出すことで、数学の重要性や活用方法を学ばせることができます。
さらに、「銀行とは何か」「株式会社とは何か」といった問いを通じて、社会科を学ぶ意義を理解させ、タブレットで調べさせたり、チームで発表させたりすることも可能です。学校で学ぶ国語、数学、社会などが、ビジネスや実社会でいかに重要であるかを伝えることができます。
私たちは「新しい教育」として3つの柱を提唱しています。ぜひ、これから生き残りをかけて学校教育改革を考えてるご担当者様がいらっしゃれば、ご連絡ください。
微力ではありますが、当社がなにかお手伝いできるかと思います。