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経営者の指針となる企業会計を原理・原則で考える

今日は「減価償却」に関する記事を書きたいと思います。

投資の神様であるウォーレン・バフェットは、投資対象として注目する経営分析指標として、「バフェットの利益率」というものを提唱しています。

このバフェットの利益率は以下の計算式で計算されます。

バフェットの利益率=当期純利益÷(棚卸資産+有形固定資産)

棚卸資産や有形固定資産は、貸借対照表に記載されていますので、各社の貸借対照表を見ることによってバフェットの利益率は計算できます。

有形固定資産は、商品の製造⇒販売までの一連の流れに必要な設備・店舗、棚卸資産は商品の在庫です。

つまりバフェットの利益率は、保有する設備・店舗や商品在庫からどれだけの利益を上げることが出来るかという指標です。

これが高いということは、少ない投資額でより多くの利益を上げることができる企業体質だということになり、これから投資を行う投資家にとっては非常に重要な指標です。

そう、つまり、企業経営において「有形固定資産」は非常に重要ということです。

その有形固定資産において生じる費用、それが「減価償却費」です。

今回、この減価償却に関するお話しとして、稲盛和夫さんをご紹介したいと思います。

京セラを世界的な大企業にまで育て、最近では日本航空の再建にも成功した稲盛和夫氏。

稲盛氏の経営手腕は高く評価されていますが、氏は著書の中で

「会計はコックピットの計器類に相当し、これが読めなければ、計器なしで飛行機を操縦するようなもの」

ということを述べられています。

また、JALの再建には管理会計に基づく計数管理の効果が大きかったとということも述べておられます。

そう。

近年では、スカイマークエアラインのニュースでも取り沙汰されたように、固定費の大きなインフラ系の事業では、精緻な会計管理が生命線を握ります。

なぜなら、固定費の大きさゆえにすぐに資金ショートの危機を起こしてしま
うからです(ちなみにバフェットはキャッシュフローを非常に重視しています)。

さて、このように会計に関して深い知識を有する稲盛氏が減価償却の実務
ついて、原理原則から考える大切さを以下のように説いておられます。

【減価償却と原理原則による判断】

『会計の分野における原理原則に則った判断というものについて、固定資産の減価償却に用いられる耐用年数の例で考えてみたい。

たとえば、経理の担当者に「機械を買うとなぜ減価償却が必要になるのか」と尋ねるとする。

「機械というものは使っても形を変えずに残っている。

原材料のように、使えば製品に姿を変えてなくなってしまうものとは違う。

それゆえ、何年も動く機械を買ったのに一時にすべて費用として落としてしまうのはおかしい。

「そうかと言って、さんざん使ったあげく、捨てるときに初めて費用に落とすというのも明らかに不合理である。

その機械がきちんと動き、製品をつくることができる耐用年数を定めて、その期間にわたって費用計上するのが正しい」

という答えが返ってくるであろう。

これは納得のいく話である。

ところが経理の常識では、その耐用年数について、いわゆる「法定耐用年数」に従って償却することを考える。

財務省の省令の一覧表にあてはめて償却年数を決めるのである。

たとえば、その一覧表によるとセラミックの粉末を成型する設備は「陶磁器、粘土品、耐火物などの製造設備」の項目に該当し、耐用年数は12年と定められている。

この規定に従えば、非常に硬度の高いセラミックの粉末を成型するため磨耗が激しい機械設備でも12年で償却することになる。

一方、磨耗がそれほど激しくない菓子製造用の砂糖やメリケン粉を練る機械は「パン又は菓子類製造設備」の項目に該当し耐用年数は9年とセラミックより短くなっている。

これは容易に納得できことではない。

それぞれの機械が正常に機能する期間で費用に計上することが当然であるにもかかわらず、実務には「法定耐用年数」に無理矢理あてはめるという決め方をされて、経営者として平生としていられるだろうか。

法定耐用年数というものは「公平な課税」を重視する税法において、定められたものであり、個々の企業の状況の相違を認めないで「一律公平に」償却させるためのものである。

私の経験では、セラミックの粉を四六時中練れば、機械の保守をきちんとして大切に使っても、せいぜい5、6年持たせるのが精一杯である。

そうであれば、償却も実際に機械を正常に使える年数で行なうべきであろう。

しかし、経理・税務の専門家は、「決算処理上6年で償却したとしても、税法上は12年で償却しなければならない。

だから、もしそうすれば最初の6年は償却が増えて利益は減る。ところが、税金計算では法定耐用年数の12年での償却となるので利益は減っても、その分の税金は減らないことになる。

いわゆる税金を払って償却する有税償却になる。」と言うであろう。

また、「税務上の耐用年数が法令で定められており、みんながこれに従ってい
るのにわざわざ無理に異なったことをやるのは賢明ではない。

実務的にも償却計算が二本立てになって煩雑になる」と主張するかもしれな
い。

このような専門家の意見にたじろいで多くの経営者は「そのようなものか」と思ってしまうのではないだろうか。

たとえ実務上の常識がそうであったとしても経営や会計の原理原則に従えば、有税であっても償却すべきである。

6年で駄目になるものを12年で償却したら、使えなくなっても償却を続けることになる。

すなわち実際に使っている6年間は償却が過小計上されており、その分があとの6年へと先送りされていることになる。

「発生している費用を計上せず当面の利益を増やす」というのは、経営の原則にも会計の原則にも反する。

そんなことを毎年平然と続けているような会社に、将来などあるはずがない。

「法定耐用年数」を使うという慣行に流され、償却とはいったい何であり、それは経営的な判断としてどうあるべきなのかという本質的な問題が忘れられてしまっているのである。

だから、京セラにおいては法定耐用年数によらず、設備の物理的、経済的寿命から判断して「自主耐用年数」を定めて償却をおこなうようにした。

具体的には製造設備の耐用年数は4年から6年とおおむね税法で定められて年数の半分としているが、変化がとくに激しい通信機器関係の設備では税法上10年となる耐用年数を大幅に短縮している。

このように会計的にはいわゆる「有税償却」を実施し、税務上は税法で定められた耐用年数による償却計算を別途行なっている。−』ーここまで。

一般的には、会計事務所では減価償却について、税法上の「法定耐用年数」を使って償却計算を行っています。

しかし、この「法定耐用年数」はあくまでも課税の公平のために定めらた税法上の年数であり、会計上の合理性はありません。

会計上の原理原則で考えれば、「経済的耐用年数」を使うべきなのです。

そうしないと、適切な償却費が計算できず、ひいては適正な経営成績を知ることができずに経営判断を誤るかもしれません。

会計処理においては、本当にこの処理で取引実態、経営実態を表すことができるのか、常にその原理原則を拠り所にして判断していく必要があるのです。

ちなみに・・

あの投資家として有名なバフェット氏も「減価償却費は現実の経済的コストである。製造会社や商事会社にとって,固定資産とその減価償却は,経済的成功 又は失敗を測定するためには,金融商品よりもはるかに重大である。」と語っています。

簿記(財務会計論)の学習では、電卓でささっと計算する減価償却費・・。

実は、経理管理の側面でも、投資情報としての側面でも非常に重要なんですね。

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