株式会社M-Cass|経営体験型・人材育成研修セミナー|熊本・福岡

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AI時代の商業教育とは?「問題の解き方」から「使いこなす」実学教育の時代へ

1. はじめに

この記事は、高校・専門学校・大学で簿記、会計、経営学などの商業教育・ビジネス教育に携わる方に向けて書いています。

私は、独自開発のビジネスゲームを使った人材育成事業の経営者です。公認会計士業務としての実務経験と、自分自身の会計士試験での苦労を活かし、熊本学園大学、熊本市立総合ビジネス専門学校、専修大学熊本玉名高校、熊本市立藤園中学校などで教えています。その現場で気付いたことをまとめます。

2. AI時代、教育は「旧態然」のままでよいのか

AIは「任せていた仕事」を代替する

ここ数年の生成AIの進歩は目覚ましく、資料整理、情報収集、分析など、これまでスタッフに頼んでいた作業をAIが24時間こなしてくれます。

アイデアやビジョン、全体像を持つ人は、人に任せていた部分もAIで自分一人でこなせるようになり、大きな成果を出せます。一方で、言われたことをこなす作業が中心だった人にとっては、厳しい時代です。

学校教育の現場は

では学校教育はどうでしょうか?私が見る限り、ほぼ旧態然のままです。気の利いた学校は「AIを使ってみましょう」と取り組んでいますが、中心はやはり「答え・解法」のある試験勉強です。特に商業高校や専門学校では資格試験対策が中心になり、「問題の解き方」の教育が主になっています。

その一方で、東大・京大の入試問題をAIが解き、合格者の最高得点を上回ったと報じられています。解き方を覚える教育だけでよいのか、という疑問が出て当然です。

「早くからAIに慣れさせる」だけでは解決しない?!

では、小学生のうちからAIを日常的に使わせればよいのでしょうか?私は懐疑的です。

「探偵ナイトスクープ」で、AIに頼りすぎる娘に悩む父親の依頼が取り上げられていました。娘さんはAIに考えてもらった標語で標語コンクールに入賞しましたが、同じようにAIを使った別の小学生からも、全く同じ標語の応募があり、その子も入賞したそうです。同じ題材をAIに投げれば、同じ答えが返ってきます。みんながAIを使う競争の場では、これでは差別化になりません。

差を生むのは「使う側の知識」

AIの成果は、使う側の理解度で決まります。例として「減価償却」を考えます。


①計算方法を覚えて電卓を叩く学び方(簿記3級・2級レベルの試験勉強)で止まっていると、AIへの質問は「減価償却について教えて」になりがちです。

②財務会計、管理会計、法人税法などを腰を据えて学んだ人なら、次のように踏み込めます。

  ・収益費用アプローチと資産負債アプローチ、両方の観点からの考え方
  ・会計上と税務上の計算の違い
  ・経営者目線での、投下資本の回収計算としての減価償却と、経済的耐用年数・法定耐用年数を使うことの是非

質問が変われば、AIの回答も、その後の行動も大きく変わります。必要なのは「AIの使い方」を教えることよりも、その土台となる体系的な知識と経験を身につける教育ではないでしょうか。

3. 「聞くだけ」の授業をやめた理由

座学による受動学習の限界

先生が教科書を片手に長く説明し、生徒は聞き続ける。この授業スタイルは明治以降ずっと続いてきました。しかし、何が起こっているのは?それは誰しもが経験している「聞いても理解できない、聞いたそばから忘れる、結局身につかない」・・・。これは個人の努力不足ではなく、受動学習そのものの限界です。

  • Freeman et al.(2014, PNAS)は、大学の理工系科目225件を分析したメタ分析で、能動的学習のほうが成績が高く、従来型の講義では不合格になる確率が約1.5倍だったと報告しています。
  • Deslauriers et al.(2019, PNAS)は、ハーバード大学の物理の授業を対象にした無作為比較で、能動的な授業の学生のほうが実際には多く学んでいたのに、本人の「学んだ実感」は受け身の講義を受けた学生より低かったと報告しています。流暢な説明を聞くと「分かったつもり」になる、いわゆる流暢性の錯覚です。

当社の提案:「シミュレーター法」

当社は10年前から、ビジネスゲームを活用した「シミュレーター法」による実践演習を提唱しています。大切にしているのは次の3つです。

  1. やりながら学ぶ
  2. やってみて、お互いに教え合いながら学ぶ
  3. 失敗して学ぶ

ゲームの中で受講者は実際に意思決定をし、結果を受け止め、うまくいかなければやり直します。失敗しても大丈夫な環境だからこそ思い切って挑戦でき、それが深い学びにつながります。

Sitzmann(2011, Personnel Psychology)は、65件の研究(受講者6,476人)を分析し、シミュレーションゲームで学んだ人は、比較グループより自己効力感が20%、宣言的知識が11%、手続き的知識が14%、知識の保持が9%高かったと報告しています。

「教えすぎない」ファシリテーター運用

もう一つの当社のノウハウが、ファシリテーターの運用です。ファシリテーターには「一度に8分以上は話さない」「解説しすぎない」と伝えています。流れはシンプルです。

  1. 概要を簡潔に説明する
  2. 「では、やってみましょう」と促す
  3. 失敗してもいいので、とにかくやってみる

月1回のファシリテーター勉強会でも、「先生や講師にならないでください。長々と解説するのが仕事ではありません。受講者が自分で疑問を持ち、自分で考え、お互いに教え合うよう上手にファシリテートすることが役割です」と伝えています。そして「主役はあなたではなく、ゲームで学ぶ各チームのメンバーです」とも。

ゲームではCEO・CFO・PSMなどの役割を分担し、各メンバーが場面ごとに主役になれる設計です。簿記資格者のような高い計算・事務能力がなくても、サイコロ運、戦略眼、チームをまとめる力があれば活躍できます。

4. 実践例:1級・2級合同の「財務分析大会」

こうした考え方を簿記の正規授業に落とし込んだ例として、熊本市立総合ビジネス専門学校の「商業簿記」で行った、日商簿記1級・2級クラス合同の財務分析大会を紹介します。

なぜ1級と2級を一緒に学ばせるのか?

通常、レベル差の大きい1級クラスと2級クラスが一緒に学ぶことはありません。しかし私たちは「お互いに学び合うこと」を重視し、財務分析という切り口で、同じ題材に取り組める場をつくりました。

題材は熊本の上場企業・平田機工

決算書について、私たちの授業では「作れる・読める・活かせる」の3つを学びます。一般的な簿記の授業が扱うのは、ほぼ「作れる」だけです。今回はいきなり数値を計算する「活かせる」ではなく、「読める」に着目しました。

  1. 企業を知る:1級・2級混合のチームで平田機工の事業内容を調べ、黒板に板書して発表します。私からは2代目・平田耕也氏の言葉などを紹介し、数字の羅列をイメージしやすくしました。
  2. 有価証券報告書で分析する:貸借対照表と損益計算書から、授業で習った勘定科目と金額をピックアップします。そのうえで「この科目・金額が計上されるには、どんな仕訳が切られているか」を、教科書を調べながら書き出してもらいました。たとえば貸借対照表に計上されていた「役員賞与引当金」について、仕訳を書いてもらいます。

ワークの狙い

 ①授業で習った内容が実際のビジネスで使われているとわかり、やる気が出る
 ②財務分析で数値を出すとき、その勘定科目と金額の裏にある仕訳と取引を読み取れるようになる(「活かせる」につながる)

さらに深掘りする

授業ではさらに、次の2点を考えてもらいました。

 ①なぜ平田機工は役員賞与引当金を計上したのか(計上の論拠)?
 ②引当金は、会社が自由に計上してよいのか?

引当金の計上要件は、企業会計原則の注解18に規定されています。簿記2級では会計理論は出題されませんが、AIが自動処理・分析までこなす時代に、表面的な仕訳だけ学んでも意味がないと伝えるため、あえて踏み込みました。

1級生が2級生に教え、2級生が1級生に質問する。こうして教え合い、学び合う環境が生まれました。カリスマ講師の授業を聞くだけなら自宅のスマホ視聴でもできます。オンライン学習が当たり前の時代に、わざわざ教室に集まって学ぶ意義は、ここにあると考えています。

5. まとめ:AI時代の簿記教育とは

巷の簿記の授業は、仕訳を練習し、問題集を繰り返し、先生が解き方を教える形が一般的です。私たちの授業は、学び方を学ぶところから始め、作った財務諸表をどう読み取り、どう活かすかまでを含めて簿記を学びます。

財務諸表をアップロードするだけでAIが分析してくれる今、数字にどんな意味があり、経営にどう活かすのかを理解しているのは、使う側の人間でなければなりません。そのために、旧来の「問題の解き方」中心の試験勉強を改め、ドリル中心の自己流学習から、科学的で戦略的な学習方法へ切り替える授業が必要だと考えています。

新しい教育は、九州・熊本で始まっています。「人づくりは国づくり」という想いで、この取り組みを全国の学校に広げていきたいと思っています。

導入実績

  • 行政・金融機関:九州財務局・福岡財務局の職員研修、金融機関の経営セミナー
  • 教育現場:熊本学園大学商学部・会計大学院の授業、県立熊本商業高校の部活動、熊本市立総合ビジネス専門学校、専修大学熊本玉名高校、藤園中学校でのジュニアビジネススクールなど
  • 次世代教育:小学生向けゲーム「コドモカンパニー」による、ビジネス、算数、社会、理科への理解を深める取り組み

学校でのゲーム体験会も承っています。ご興味のある方はお問い合わせください(当社ホームページ)。

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