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企業会計入門レベルでも思いつくやり方で不正経理が !?

こんにちは。

ビジネスゲーム開発者で、日本公認会計士協会準会員の平井です。

今回の記事では会社の不正経理について書きたいと思います。

 

2002年7月、米長距離通信業界第2位の巨大企業ワールドコムで空前の経理操作が行われていたと大きく報道されました。

ワールドコムでは費用として計上すべき電話回線のコストを費用とせず、設備投資として処理 して利益を水増ししたとのことです。

架空利益は約38億ドル。当時のレート1ドル120円で換算したとして、4600億円弱です。わが国の2001年法人所得ランキングで、第1位のトヨタが6800億円、第2位の東京電力が3700億円ですから、とてつもない金額ということになります。

今回の事件で人々を驚かせたのは、金額もさることながら、その手口の単純さでした。

ワールドコムの場合は、実は「会計学入門を履修しているような学生でも思いつくやり方で不正経理をした」という程度なのです。

どういう手口だったかを具体的に言えば、本来であれば年度の費用として計上すべきものを、後年度において償却手続で少しずつ費用処理できる設備勘定(固定資産)につけ替えることで、その年度の利益を水増ししたという手法です。

要するに収益的支出として処理すべきものを資本的支出として処理し、これにより費用額の圧縮を図ることで利益を増やしていたのでした。

たしかに、修繕費などの経費と資本的支出の区分というのは、会計監査でも税務調査でも、しばしば問題となる点です。

税務上の要件と睨めっこしながら資本的支出か費用的支出かを悩んだ方もいらっしゃることでしょう。

しかし、ワールドコムの場合は、米マスコミによると、目標利益を達成するのに必要な金額だけ経費から資産に振り替えていること、このような経費の振り替えについて、監査している会計士に相談がなかったこと、資産に計上する際の根拠資料が全くないこと、などから、会計基準の解釈の問題以前の完全な粉飾決算である疑いが強まっているようです。

粉飾の手口としては、非常に単純であり、金額も巨額です。会計監査でなぜ発見できなかったのか、疑問に感じます。

ちょっとここで、「複式簿記」の知識がない方に補足説明をすると、簿記では、取引を「①資産②負債③純資産④収益⑤費用」の5つの要素(勘定といいます)に分類し、その5つのうち、「原因」と「結果」という観点から最低1つ以上を選びます(①資産を2つとか、①資産と②負債という組み合わなど)。

そして、1度の記帳で取引の「原因」と「結果」記録するために、会計帳簿真ん中から左側と右側に分け、上述で選んだ5つの用を左右に振り分けます。この振り分けの方法のことを「仕訳」といい、左右同時に記入するやり方のことを「複式記入」といいます。

なので、「複式簿記」とは、上述の5つの要素の組み合わせで記録する方法なのです。

このとき、5つの要素をどの場面で左側と右側に振り分けるのかが問題となりますが、それは「ルール」ですでに決まっています。

そのルールは次の通りです。

【複式簿記のルール】

(左側)   (右側)

資産の増加  資産の減少

負債の減少  負債の増加

純資産の減少 純資産の増加

費用の発生  収益の発生

ここで、固定資産に関する保守点検代を支出したといます。

上記ルール表で考えると、支出は「お金を払った」ということですので「お金=資産」であり、(右側)「資産の減少」が選択されます。

問題は(左側)です。

(左側)に該当しそうな項目は「資産の増加」と「費用の発生」です。

今回のワールドコムでは、「費用の発生」とすべきところを「資産の増加」としていたということです。

その効果は、一度に費用計上されず、減価償却を通じて徐々に費用計上されるため、期間利益を大きく見せることができる(トータル利益は残存価額設定分変わります)ということなんです。

 

また、いくつかの報道でもふれられていましたが、この事件は、利益数値よりも、客観的で操作しにくいとされるキャッシュ・フローの数値もあてにならないという例でもあります。

キャッシュ・フローは減価償却、資産の評価減、引当金などによっては、影響を受けませんが、経費の支出にするか、設備投資の支出にするかという判断には左右されます。

ワールドコムは、営業キャッシュ・フローのマイナス要素となるべき支出を、投資キャッシュ・フローに区分することにより、営業キャッシュ・フローを使って、設備投資を積極的に行っている企業であるというイメージを与えることができたのかもしれません。

本来、ワールドコムほどの大企業であれば、確立された経理基準で費用か資産かという振り分けが行われるようになっており、さらに、この基準を経理部門が順守しているかを内部監査(internal audit)でチェックし、また、設備投資の額などは取締役会での決定を通じてチェックが働くようになっているはずです。

こういった内部統制(internal control)に加え、会計事務所による外部監査(external audit)により万全を期しているのが普通ですが、仏つくって魂入れずで終っています。

CFO(最高財務責任者)になろうという人が CEO(最高経営責任者)との面接に当たり、「2+2 はいくつ?」という質問で試されたら、いまの時代、正解は、Whatever figure you say.(あなたのおっしゃる数字にしてみせましょう)だというシャレにならないジョークが語られるでしょう。

なお、わたくしどものビジネスゲームM-Cassでは、CEOとCFOの役職に就いていただきます。

お互いの能力を提供しあうということを主旨としていますが、こんな不正会計なんかしちゃ〜ダメですよ!

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