こんにちは。
当社は、ビジネスに従事する者であれば必須の
「経営数字」に関する知識とセンスを身につけて
いただく企業研修(幹部研修・新人研修)及び
経営者向け経営塾を行っています。
これらの企業研修や経営塾においては、通常の
「座学」による受動学習ではなく、当社独自
開発の「ビジネスゲームM-Cass( 特許出願中)」
を使ったカリキュラムを使っておりますが、
これは、単に「楽しい研修」とか「面白い研修」
ということを目指しているわけではなく、
しっかりとした教育効果における科学的な根拠
があってのことなのです。
ここで、教育界において重大な問題として認識
されている「転移の失敗」という問題をご存知
でしょうか?
100年近く教育界で認識されているにも関わらず、
教育業界や人材研修業界に携わる人たちが見ない
振りをする問題があるのです。
それが「転移の問題」であり、転移の問題は、
「教育における聖杯」とまで呼ばれています。
転移とは、何かをある状況で学んだときに
(授業を受けるなど)、それを別の状況(普段の生活など)
でも使えるようになることを指します。
しかし、残念なことに、1世紀以上にわたって
熱心な研究が行われているにもかかわらず、学校
教育や企業研修において転移はほとんど実現されて
いないのです。
心理学者のロバート・ハスケルは、学習における
転移に関する論文の中で、次のように述べています。
「学習の転移が持つ重要性にもかかわらず、過去
90年間の研究結果は、私たちは個人としても、
あるいは教育機関としても、顕著な形で転移を
実現できていないことを明確に示している。」
そして彼は、
「誇張でも何でもなく、それは教育における
スキャンダルだ」
とつけ加えているのです。
なお、ハスケルは、この「転移が起こらない問題」
の具体例として次のように述べています。
「たとえば私たちは、高校で教えられる初歩的な
心理学から、大学レベルの心理学入門コースへと
学習の転移が生まれるだろうと期待する。
しかし、高校の心理学科を卒業して大学に
入学した学生と、高校で心理学を履修しなかった
学生の間に優劣が存在しないことは、何年も
前から知られている。高校で心理学科に通ったのに、
そうでない人より成績が悪い学生すらいるのだ。」
私どもの人材育成のための教育事業についても
以前から、この問題は認識していました。
具体例を挙げますと、
まず第1に、税理士や公認会計士などの会計系
資格取得のための講座における「応用問題が
解けない」という問題です。
長年、社会人受験生等に向けて日商簿記検定など
を教えていて感じるのが、「基本問題は解けても、
応用問題を出題されると解けなくなる」という
現象が多数あるということです。
これは別に会計系の資格取得の学習に
限ったことではなく、高校受験や大学受験、
その他の受験勉強において、教えている側の
人たちの多くが感じている現象だと思います。
また、第2に、企業研修や経営塾において
決算書の数字とその分析について参加者に
質問をするのですが、例えば、
「この決算書の数字は、会社経営において
どんな意味を有しましまか?」
「この数字から分析された経営分析指標の
数値を受けて、経営者はどのような判断をし、
どのような経営改善策を採ればいいのでしょうか?」
といった質問をしても、明確に答えられない
ということが多々あります。
それまで、テキストや専門書などで
決算書の読み方や経営分析について「学んできた」
のにです。
ちなみに、この問題については、他の研究者も
検証しており、次のような問題点を指摘しています。
「これまでほぼすべての実証研究において、
例題で勉強した学生は、その例題からわずかに
逸脱した問題すら解くことができない場合が
多いという結果が出ている」
−認知科学の研究者であるミシェリン・チー
「大学レベルの物理学コースで優秀な成績を
収めている学生でさえ、基本的な問題について、
それが正式な教育やテストを受けた際の内容とは
少し異なる形で出題されると、解けなくなって
しまう場合が多い。」
−発達心理学者であるハワード・ガードナー
なお、このような「転移の失敗」は、
学校教育や試験勉強に限定されず、企業研修も
同じように厳しい状況にあります。
タイムズ・ミラー・トレーニング・グループの
前会長ジョン・H・ゼンガーは次のように
述べています。
「トレーニングの効果について厳密に検証
している研究者たちによれば、トレーニング後
に明らかな変化を見つけるのは難しい。」
さぁ、ここまで読んでどのような感想を
持ちましたでしょうか?
自社が今まで定期的に行っていた
「新人研修」や「幹部研修」といった企業研修
において、
「研修の効果が見えない」
「本当に研修で社員たちが変わったのか分からない」
ということに身に覚えを感じた方もいらっしゃる
でのはないでしょうか?
だとすると、その「感覚」は正しいといえます。
ここまで読んでいただいてお分かりのように、
従来からの集合形式、座学形式による教授方法の
企業研修や学校教育法では、「転移が起こらない」
ため、学んだことが「ビジネスの現場で活かせない」
のです。
このように、長年放置され続けてきた
「学校教育」「企業研修」といった人材育成において
起こっている「転移の失敗」という問題に対して、
どうすれば、それを解消し、「転移」が起こるのか?
その方法について次回の記事でご紹介します。
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