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情報軽視が組織を崩壊させる

軍事でもビジネスでも情報が命綱

 ビジネスの現場で常につきまとうもの・・
それが「不確実性」です。

 そして、経営者はこの「不確実性」に
対処するために、できるだけ情報を集め
この先に何が起こるのか、どのような
トレンドに変化するのか、といった大きな
流れを読もうとします。

 このようにビジネスの現場では「情報」
の活用が不可欠だということに異論を挟む
人はいないと思います。

 そして、

 これは、「軍事」においても同じことで、
敵がどのような編成で、どのように攻めてくる
のか、といったことを事前に入手し、分析する
ことは勝利を掴むにあたり絶対条件です。

 ですが・・・・
誰もが思っている「情報の活用」について
それを軽視し、ひいては国を滅ぼす一歩手前
まで追い込んでしまった事例があるのです。

 それこそが、我が国、日本の太平洋戦争時
における日本軍だったのです。

 そこで、今回のブログでは、「失敗事例から
学ぶ」ということで、この「日本軍敗北の理由」
についてご紹介したいと思います。
(参考資料:敗北の理由〜谷光太郎著)

情報を無視した作戦参謀の独断先行

軍事用語がビジネスの世界で使われて
いる例は意外とあります。

「戦略」はビジネスの世界では、企業
における経営方針であり、「戦術」は
営業などの日々の活動を指すといえます。

さきの太平洋戦争において、日本軍の
敗北には様々な原因があると思いますが、
その1つに「情報の軽視」があるという
研究があります。

軍では情報参謀が収集した情報をベースに
作戦参謀が作戦を立案します。
しかし、太平洋戦争では、情報を無視
した作戦参謀の独断専行が多かった
ようなのです。

このことをビジネスに置き換えると、
市場調査をせず、闇雲に営業をかけたり、
顧客の声を聞かずに商品開発をするような
ものです。

情報軽視により、日本軍が大敗した具体例
として「ノモンハン事件」が挙げられます。

ノモハン事件は、昭和14年の5月から9月
にかけて満州と外蒙古(現在のモンゴル)の
国境近くのノモンハン地域で起こった日本軍
とソ連軍の本格的な戦闘のことです。

日本軍主力の第23師団は15,000人が戦闘
に参加し、戦死・戦傷者は10,000人、
生死不明1,000人、損耗率は73%とほぼ
全滅の状態となり大敗しました。

ノモンハン事件に際して、情報参謀は
可能な限りソ連軍の情報を入手しようと
していました。

情報部の情勢判断の基本は、敵軍の
特色、兵力、配置、補給能力であり、
満州各地にある特務機関やソ連軍将校の
亡命者からの情報など得ることで、関東軍
情報部はソ連軍の兵器、構成、戦法をほぼ
正確に把握していました。

しかし、作戦参謀には、情報参謀が苦心して
収集、分析した数字より自分の願望的直感や、
実態を持たぬ精神力が大切だったのです。

例えば、当時の参謀本部ロシア課ソ連軍備
主任であった野々山中佐は、「ソ連軍の軍備
充実ブリの実態を作戦部に正しく認識して
もらうことが第一」と努力を重ねていました。

ノモンハン事件勃発の三ヶ月前・・・
ソ連軍はポーランド近くの西部国境付近
で大軍事演習を行なっており、このとき
野々山中佐は演習の詳細を「ソ連軍の最新の
戦略、戦術情報」として大量印刷して関連
部門に配っています。

そして、ノモンハン事件が勃発すると
野々山中佐は日本軍(関東軍)とソ連軍の
戦況報告を地図に示していき分析を続け、
日ソ両軍の配置体制が、三ヶ月前のソ連軍
の大演習の状況に似てきたことを掴みます。

「このままでは機械化兵団と戦車兵団に
包囲され、日本軍(関東軍)が全滅する
恐れが多分にある」

として、緊急にノモンハン方面での戦略体制
を変えることを意見具申しました。

ところが、この参謀本部の警告も作成参謀
は耳をかさず、当然ながら現地で戦う
日本軍(関東軍)には届きませんでした。

そして、その結果は、日本軍の壊滅的な
大敗北です。

なお、
作戦参謀として、作戦課に在籍していた
高山信武少佐は、作戦課内の雰囲気を次の
ように書き記しています。

「情報軽視。米英の実力を承知せずして
開戦を決意したり、敵情を把握しないまま
作戦を指導する傾向がなしとなかった。

敵を知る努力を怠り、己の力を過信して
独り相撲を挑む者には勝運は訪れない。
作戦課の行う作戦会議に情報関係幕僚を
同席させることは極めて稀であった。」

軍の運用にあたっては、まず
第1に情報参謀が情報を収集し、
第2に後方参謀がロジスティックス(兵站)
関連を考慮し、これらを勘案して作戦参謀
が作戦案を整えるというのが鉄則です。

この順序が逆になってはいけません。
逆になって作戦参謀の発言力が強く
なると、作戦参謀は独断や願望が先に走り、
地道な情報分析をせずに「必勝の信念」
など美辞麗句のいわゆる作文の立案で
職務完了となってしまいます。

情報判断が政策に先行しなければ
ならないことは、軍事でもビジネスでも
鉄則なのです。

名経営者がなぜ失敗するのか?

ビジネスの現場で、情報の軽視はどのよう
な結果をもたらすのでしょうか?
もちろん、わざわざ説明するまでもない
かもしれません。

しかし、上述の日本軍における作戦参謀
による情報参謀からの情報軽視は、70年
以上前の愚行として笑っていられるほど、
現代の私ちがは著しく進歩したとはいえ
ません。

「名経営者はなぜ失敗するのか?」
-ダートマス大学 シドニーフィルケルシュタイン著
によれば、「名経営者がなぜ失敗したのか?」
という理由について、次のように総括して
います。

P 423一部抜粋
「”名経営者”がなぜ失敗するのか?それは
彼らが現状認識を誤った企業を生み出し、
そこで自らも生き続けてしまったからだ。

情報、リスク、人的失敗を管理するため
にある組織の手順の方針をゆがめてしまった
のだ。大きな失敗を犯す人間特有の習慣を
持っていたからだ。

こうした罠に落ちた人にとっては、
外部の目にはまったく非合理的な行動
が完全に理にかなっていたのである。

本書に取り上げた”名経営者”たちは、
もちろんわざと問題を起こしたわけ
ではない。

そうなった、失敗が組織に忍び込む
複雑で狡猾なさまに彼らが気づかなかった
からだ。」

以上、上記に抜粋したように「情報・・を
管理するための組織の手順の方針をゆがめ
てしまった」とあり、現代のビジネスの
世界でも、情報に関する取り扱いの誤りが
企業を危機に陥らせていることが分かります。

トップが情報判断をすることの意味

情報は活用されなければ意味がありません。

経営者層など大きな影響力を持つ者が
活用するほど、情報の価値は活かされて
いきます。

しかし、トップが情報の価値を知り、情報
に執念を燃やさない限り、貴重な情報の
入手は困難となります。

この点について、「敗北の理由〜谷光太郎著」
において、著者は次のようなことを書いて
います。

一部抜粋P 40

『太平洋戦争時の陸海軍の首脳部には
情報への執念がなかった。対米情報を担当
した実松譲大佐の「日本海軍ほど情報を軽視
したところはない」という言葉を、第一章
で紹介した。彼が嘆いた状況の原因の1つ
は、トップが情報に真摯な関心を示さず、
これを活用しというという執念もなかった
ことだろう。』

このように、情報は軍事においても、
ビジネスにおいても非常に重要です。

そして、トップや経営者にとって
厳しい情報であればあるほど、
見たくないですし、下の部下も上には
報告したくないものです。

ですが、それではダメだということが
上記のことでお分かりいただけると
思います。

我々、日本人経営者は、この太平洋戦争
時の日本軍における失敗の教訓を活かして
いなければなりません。


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