去年の12月にビジネスゲームセミナー中級編を開催しました。
この中級編では、初級編で行った「単式(一式)簿記」から「複式(二式)簿記」へステップアップし、決算書も貸借対照表だけでなく、損益計算書も作成していただきます。
そのことで、「収益性の分析」ができるようになることを理解していただくというカリキュラムになっているんですね。
今回のセミナーには会社経営者の方も参加されたのですが、参加者の方々に次のような質問をさせていただきました。
「今までの初級編と中級編を受講してみてお分かりのように損益計算書と貸借対照表は純利益を通して繋がっていますね。
このような関係のことを何というのか知ってますか?」
参加者「・・・・。」
なかなか答えられません。
ちなみに、参加者には簿記検定1級をもっている強者もいました。
答えは「クリーン・サープラス関係」です。
みなさん、「なるほど〜」という様子です。
さらにもう一つ質問しました。
「このクリーン・サープラス関係はなぜ必要なのでしょうか?もし、なくなったらどうなります?」
さあ、読者の皆様はこの問いに答えられますでしょうか?
ちなみに、ビジネスゲーム中級編では、精算表を使い決算整理をするので、このクリーン・サープラス関係については、そこで学びます。
これは簿記検定3級でも学びますよね。
じゃあ、なぜその関係が必要なのか?意外に答えられないという方は多いのではないでしょうか。
では、答えです。
それは、財務諸表を利用する投資者の意思決定の方法に求められます。
いかにその考え方を示しますね。
【考え方】
投資意思決定のために企業価値評価
↓
自己創設のれんの推計
↓
将来の利益の予測
↓
クリーンサープラス関係を利用して株主資本から将来の利益を予測できる。
もう少し詳しく書くと
①投資者が企業価値を評価するためには、自己創設のれんを推測する必要がある。
②自己創設のれんを推測するためには、将来の投資の成果を予測しなければならないが、株主資本の増加額が純利益であるという関係を利用して、株主資本から将来の利益を予想し、これに基づいて自己創設のれんを推測することができる。
③このように株主資本の増加額が純利益であるというクリーンサープラス関係は、自己創設のれんの推測を通じて企業価値評価に役立つのである。
ということになります。
だから、例えば経営分析指標でも
自己資本利益率という代表的な指標がありますが、これだってクリーン・サープラス関係があるから、その数値に意味を持つわけです。
ビジネスゲームセミナーの初級編では総資産利益率(ROA)により業績評価をおこないます。
総資産利益率=当期純利益÷総資産
そして、中級編では自己資本利益率(ROE)により業績評価を行います。
自己資本利益率=当期純利益÷自己資本
上記の計算から明らかなように、資本(B/S)と利益(P/L)との関係を使った指標になっています。
その前提にクリーン・サープラス関係があるんですね。
簿記検定の勉強でもこの関係は学びますが、以外とその理由について知らない人が多いのがこの両者の関係なんです。