世界におけるユニコーン企業で、企業価値の上位
に占める会社として、下記の企業があります。
1 | バイトダンス(中国) | TikTok | 1,400億ドル |
2 | スペースX(アメリカ) | 宇宙開発 | 1,003億ドル |
3 | ストライブ(アメリカ) | オンライン決済 | 950億ドル |
(CB Insights「The Complete List Of Unicorn Companies」より)
上記の会社は全て、ハイテク産業ですね。
なお、ユニコーン企業を分野別で見ると、構成割合
は下記のようになっています。
順位 | カテゴリー | 全体の割合 |
1 | フィンテック | 20.8% |
2 | インターネットソフトウェア&サービス | 18.9% |
3 | 電子商取引(EC)&ダイレクト・ツーコンシューマー | 10.4% |
4 | AI | 7.8% |
このように、ハイテク分野、デジタル分野の企業が
上位を占めている現状にあります。
そして、このようなデジタル分野のビジネスでは、
1つの大きな特徴があり、それは、
競争力の源泉は、工場や店舗ではなく、革新的
ビジネスを創造する「人的資本」にある!
ということなんです。
このことが近年、欧米で認識されてきており、
投資家も企業に対して、人的資本に対する
投資や活用をより積極的に求めるようになって
きています。
このような動きを受けて、欧米の企業では、
企業会計において、「資産」とみなされない人的資本
の スキル、やる気などを数字で開示する動きが広がって
きています。
経済産業省の産業人財課が出している
「人的資本経営に関する調査について」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html
では、下記のように欧米の人的資本に関する
情報開示の動きが紹介されており、
「海外では、コロナ前から人的資本情報の開示をめぐる動きが活発化 (欧州)」
2014年 EUが非財務情報開示指令(NFRD)において、
「社会と従業員」を含む情報開示を義務づけ
(従業員500人以上の企業対象)
2019年 ISOが人的資本マネジメントに関して、
社内議論用・社外開示用の指標を整理(ISO30414)
2021年 ECが非財務情報開示指令の改定案を発表
(対象企業の拡大、開示情報の更なる具体化)
(米国)
2019年 サステナビリティ会計基準審議会(SASB)が
改訂版スタンダードを公表 (人的資本の領域について、
重要項目の開示を要求)
2020年 米国証券取引委員会(SEC)が人的資本
に関する情報開示を義務化(Regulation S-K改正)
まさしく、海外の投資家は「人的資本」を重視した
経営を求めているのです。
なお、このような世界の動向に対して
日本企業でも、人的資本に関する情報開示の動き
が見られ、
例えば、「味の素」は「人財」への投資を強化し、
食に関する知識を深めたり、次世代リーダー育成費用を
「人財投資額」として開示していますし、
オムロンであれば、「人的創造性」という指標を
出し、「年間の付加価値÷人件費」として算定される
この指標を2024年までに7%増加させるという目標
を掲げています。
ちなみに、日本ではもともと、この人的資本に関して
その大切を訴えてきた経営者は多いですよね。
一番有名なのは、松下幸之助氏で「事業は人なり」
という言葉を残していますし、
こちらの「人を大切にする経営」を唱える
電気通信大学の竹内先生は、
「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」を主催する
「人を大切にする経営学会」の副会長を務められ、
まさしく、人的資本の大切さを知る会社を増やそう
という活動をされています。
https://j-net21.smrj.go.jp/special/future/20200909.html
ちなみに、竹内先生によると、
「人を大切にする経営とは」
「関係する全ての人々の永遠の幸せを追求して
実現することを目的として事業を営むこと。」
とされています。
社員が辞める会社はダメな会社だそうで、
良い会社は、やはり、人は辞めないそうです。
そして、本当にいい会社は、社員は一人も辞めない
とのこと。
このように「人は宝」「人財」「人づくりは国づくり」
という言葉もあるように、当たり前の話し
ですが、どんな最新設備があっても、どんな高度な
デジタル技術を持っていても、それを生かすのは
「人」であり、まさしく、「人的資本」の活用こそ
が、ビジネスにおいては最重要といえますね。
企業会計上、人件費はコストとして扱われます。
(ただし、投資をし、毎月回収計算しているとも
いえます。詳しくはこちらの記事でhttps://m-cass.co.jp/blog/c01/844/)
つまり、現行の制度会計上は資産として認識されない
のです。ですが、買収額の算定なでどは、人財やノウハウ
などの無形の資産も価値として評価されます。
このため、実は、自分達では気づいていない
のですが、無形の資産(人財やノウハウ、技術など)
が会社に眠っているということもあり得るわけです。
この無形資産について、日本企業はまだまだ活かし
きれていないという現状があり、下記の日本経済新聞
の報道によると、企業価値に占める割合は3割程度
だそうです。
「主要上場会社の比較では、米国企業は企業価値に
占める無形資産が9割に達するのに対し、日本企業は
3割にとどまる。(日本経済新聞2022年5月2日記事)」
なお、この無形資産の活用について、
旭化成会長小堀氏は、次のように述べられております。
『日本企業は知財・無形資産を活かしきれていない。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は工業化社会の時代で、
モノづくりの成功体験を引きずり、情報化社会で出遅れた。
データを駆使する価値創造社会の今、知財・無形資産の
活用は欠かせない。』
さあ、ここまで読んでみて、自社のことと
して考えてみた場合、いかがでしょうか?
・まだ、人材を活かしきれていない
・人材の育成が全然できていない
・自社のノウハウなどをちゃんと認識していない
・自社の強みの棚卸ができていない
上記に列挙したようなことで思い当たる点は
ないでしょうか?
もし、あるとすれば、そこにこそ経営改善、
事業飛躍のヒントが隠されているかもしれません。
いずれにせよ、「人は宝」「事業は人なり」
という言葉は、真理です。
この点を常に意識して経営していくことは
ビジネスを発展させ、継続していくうえでは
必須のことではないでしょうか。