経営者は、決算書から得られる情報をもとに
経営判断をしなければいけないことは説明する
までもないと思います。
しかし、その情報元である決算書の数字が
果たして経営情報として妥当かどうか?
そのことを疑ったことはあるでしょうか?
今回、ある不動産投資案を題材に、経営者が
経営判断において拠り所とすべき会計情報とは
一体何か?ということについて述べたいと思い
ます。
では、ここで検討していただきたい投資案が
あります。下記をご覧ください。
【投資案】
■土地5億円、建物5億円(法定耐用年数50年)
■投資案の表面利回り5% ■頭金なしフルローン
■銀行利率1% ■年間管理費1千万円
■法人税率30%(法廷実効税率)
この投資案を採用すべきかどうか?
この点を考えてみたいと思います。
損益計算は、「収益・費用・利益」という概念
を使った発生主義会計による計算です。
税理士の先生から渡される決算書は、この考え
に基づいて計算が行われ、いわゆる「財務会計」
という分野に属するものとなります。
では、上記について「貸借対照表」と「損益計算書」
を作成してみたいとおもいます。
まずは、資金調達し、それで土地と建物に5億円ずつ
投資した時のB/Sです。
その後(第1期)、投資不動産から収益と費用が発生し、
P/Lを作成すると下記のようになります。
さぁ、どうでしょうか?
あなたが経営者として、この「損益計算」の
結果を受けて、投資案の成否を判断する
場合、どう考えるでしょうか?
まぁ、普通に考えて、P/Lにおいて「利益」
が1,400万円出ているので、この投資案は
「採択すべき!」となるかと思います。
ですが、それって本当でしょうか?・・・
というのが今回のお話です。
当社の経営塾やこのブログでもご紹介している
「経営数字からの格言」においては、経営者は
利益しか意識していないと、「儲けで泣く」こと
があるということを伝えています。
これはそもそも「利益」と「儲け」は違う
こと、経営者は「CF経営」を心がける必要が
あることを伝えている格言ですが、今回の
投資案について、このことを確認してみたい
と思います。
会計上の利益に「非資金支出費用」である
減価償却費を加えることで、CFを計算し、
さらに、借入金の返済を考慮に入れて、
この投資案により手元に残るお金を算出して
みます。
さぁ、いかがでしょうか?
CFで見ると、この投資案はマイナス2,600万円
となってますね。
「収益-費用=利益」として計算される損益計算
では、借金返済額や手元のお金などの「銭勘定」
は分かりません。
そして、この投資案については、「損益計算」で
は「利益」は出ますが、CFの計算では「赤字=不足」
となります。
このことを経営者はどう考えればいいのでしょうか?
まずは、格言でもご紹介しているのですが、経営者
は「CF経営」を常に心がけなければなりません。
当たり前の話し、お金がないと会社は続けられ
ないからです。
また、ファイナンスの分野になりますが、
「企業価値」向上のためにもCFを稼ぐ
必要があるのです。
このことから、上記の投資案についても
「損益計算」では「利益」が出ても、CFの
計算では赤字になるのであれば、この投資案
は「否」と判断すべきなのです。
以上、税理士の先生からもらう決算書を
そのまま鵜呑みしていては経営判断ができない
ことをご理解いただけたでしょうか?
このため、私どもは経営者や幹部の方々に
経営数字の根本を学んでいただきたく思って
おりますし、種類ある会計の中で経営者には
「経営者会計」を学んでいただきたいと思って
おります。
上記の投資案の例のように、いわゆる
決算書(財務会計=損益計算)では、必ずしも
経営者にとって必要な情報が得られない場合が
あるからです。
もし、あなたが会社経営に関わっている
のであれば、ぜひ、一度は経営数字について
学んでみてください。必ず経営判断の拠り所
の1つになると思います。